組織常在性T細胞が“炎症記憶”を保持し全身へ波及 ~全身に連鎖するアレルギー疾患の新たな治療法開発に光
2026年04月09日
研究?産学連携
365bet体育在线_365bet体育平台-【中国科学院】@大学院医学研究院の岩村千秋特任准教授、平原潔教授、平沢累特任助教、大鳥精司教授らの研究グループは、組織常在性記憶CD4? T細胞(CD4? TRM細胞)注1)が臓器にとどまる仕組みは、CD69注2)という細胞表面分子によって制御されていることを明らかにしました。さらに、臓器にとどまるCD4? TRM細胞は、「炎症を起こしやすい性質」を炎症組織で獲得し、血液中に移動後も保持しています。これは、喘息などの臓器特異的な慢性アレルギー炎症が、体の別の部位で炎症の原因となっている可能性を示唆しており、慢性炎症疾患に対する新たな治療戦略の開発につながる可能性が期待されます。
本研究成果は、2026年4月8日(米国東部標準時間)、国際科学誌 Science Advances に掲載されます。
(論文はこちら:10.1126/sciadv.adw1038)

図 肺にいた免疫細胞が血液を巡り、別の場所で炎症を広げる
■研究の背景
私たちの体内には、侵入した病原体を「記憶」し、再び侵入してきた際にすばやく反応する「記憶T細胞」という免疫細胞が存在します。その中でも、皮膚、肺、腸などの末梢臓器に長くとどまる「組織常在性記憶T細胞(TRM細胞)」は、感染防御に重要な役割を果たす一方で、アレルギーや自己免疫疾患では臓器固有の炎症を長引かせ、病気を難治化させる原因にもなります。しかし、一度組織に定着した後にどのような動態を示すのか、その性質なども十分に解明されていませんでした。
■研究成果のポイント
本研究では、喘息モデルマウスおよびヒト患者検体を用いた解析により、次の点を明らかにしました。
- CD69は、S1PR1注3)の働きを抑えることでCD4? TRM細胞を組織内に留める重要な制御分子である
- CD69の発現が低下すると、TRM細胞は組織から血液中へ移動し、「元TRM細胞(組織から血液に移動したTRM細胞)」として循環する
- これらの元TRM細胞は、とどまっていた組織で獲得した「炎症を起こしやすい性質」を細胞の記憶として保っており、移動した別の組織で強い炎症反応を引き起こす
- 慢性炎症患者の血液中で循環する元TRM細胞(GPR183とCD161が特徴的な細胞表面分子)を同定
■今後の展望(研究者コメント)
本研究の知見は、成長期の小児が様々なアレルギー疾患を次々に発症するアレルギーマーチや、同一患者で複数のアレルギー性疾患を併発する病態の理解につながります。また、血液中で循環する元TRM細胞を特異的に区別するタンパク質であるGPR183やCD161を標的とした、アレルギー性疾患の新たな治療法の開発が期待されます。![]()
左から平原 潔教授、岩村千秋特任准教授、平沢累特任助教
■用語解説
注1)組織常在性記憶 CD4+ T 細胞(CD4+ TRM 細胞):一度炎症や感染が起こった肺?腸?皮膚などの臓器に長く滞在し、その場所を守り続ける記憶T細胞の一種。再び異物が来ると素早く反応するが、過剰に働くと慢性炎症の原因になる。
注2)CD69:免疫細胞の表面に存在するタンパク質で、細胞が「この場所にとどまるかどうか」を決める役割を持つ。
注3)S1PR1:免疫細胞が血管やリンパ管の方向に移動するための受容体形分子で、CD69がこの発現を抑えることで、細胞は組織内にとどまる。